相続放棄にかかる費用は?
自分でするといくらかかる?

相続放棄 相続の準備と知識

「相続放棄したいけど、専門家に頼むとどれくらい費用がかかるか心配」

このようなお悩みはありませんか?

専門家に依頼すると聞くと高額な費用を請求されるイメージがあると思います。

しかし、実際にはそれほど高額な費用をかけずに専門家に依頼できます。

本記事を読めば相続放棄の費用の相場と専門家に依頼するメリット・デメリットを理解できます。

具体的には

・自分で相続放棄の手続きをした場合にかかる費用

・専門家に相談した場合に依頼できることと費用

について解説していきます。

まずは自分で手続きをした場合の費用から見ていきましょう。

自分で相続放棄するといくらかかる?

相続放棄の手続きを弁護士や司法書士に依頼しない場合、かかる費用は相続人一人につき3,000~5,000円程度です。

内訳は以下の通りです。

・収入印紙 800円

相続放棄の申述書に添付して提出します。

申述人1人につき800円の印紙代がかかります。

収入印紙はコンビニや郵便局で購入可能です。

・郵便切手(予納郵券) 500円程度

家庭裁判所によって必要な金額が異なるため、事前に確認して下さい。

代表的な家庭裁判所の予納郵券の金額と枚数をまとめておきます。

84円切手10円切手合計
東京家庭裁判所4枚4枚376円
大阪家庭裁判所5枚5枚470円
福岡家庭裁判所6枚1枚514円

・戸籍謄本(戸籍全部事項証明書) 400~750円

戸籍謄本は相続人の順位によって必要な種類、数が異なります。

以下をご参照ください。

配偶者第一順位第二順位第三順位
被相続人の死亡記載のある戸籍謄本
被代襲者の死亡記載のある戸籍謄本〇※1
被相続人の出生時から死亡時までのすべての戸籍謄本
配偶者または子の出生時から死亡時までのすべての戸籍謄本
被相続人の親の死亡記載のある戸籍謄本〇※2
兄弟姉妹の死亡記載のある戸籍謄本〇※3

※1:孫が相続人の場合

※2:祖父母が相続人の場合

※3:甥・姪が相続人の場合

戸籍謄本の費用は350~450円と自治体によって多少異なります。

除籍謄本は約750円の手数料がかかります。

相続放棄を弁護士や司法書士に依頼するといくらかかる?

自分で行えば費用は安くすみますが、すべての手続きを自分ですると手間と時間がかかります。

司法書士や弁護士に依頼すれば、費用はかかるものの手間と時間を大幅に省けます。

司法書士と弁護士で費用がことなるため、それぞれに依頼できることをまとめます。

司法書士に依頼できること

相続放棄において司法書士に依頼できることは次のようなものです。

・戸籍謄本などの収集

除籍謄本だけであれば難しくありませんが、出生から死亡までのすべての戸籍謄本を収集するには手間と時間がかかります。

裁判所も役所も平日しか開いていないため、土日が休みの人は仕事を休んで手続きをしなければいけません。

司法書士に依頼すれば戸籍の収集を任せられます。

ただし、戸籍の収集のみを依頼することはできません。

相続放棄の申述書提出のための必要書類収集のために戸籍謄本を収集できます。

・相続放棄申述書など必要な書類の作成

相続放棄の書類は初めて目にするものばかりです。

法律に関する専門的な知識がないため、どのように書けばよいのか不安になります。

司法書士に依頼すれば、相続放棄申述書の作成を丸々任せられます。

また、3ヵ月の熟慮期間を過ぎてからの申請となる場合は上申書の作成を依頼できます。

・照会書の記載

申述書提出後に照会書が家庭裁判所から届きます。

家庭裁判所が指定した期限までに返送する必要があります。

照会書の記載も依頼することが可能です。

司法書士に依頼した場合の費用

司法書士事務所によって異なるため、おおよその相場をまとめておきます。

相続放棄の依頼は弁護士にすることもできます。

依頼する側から見て弁護士と司法書士の大きな違いは費用面です。

基本的に司法書士に依頼した方が安く済みます。

それでは、実際の費用の相場をまとめます。

前提として、熟慮期間である3ヵ月以内の場合です。

・初回相談料

相場は60分の相談で0円~5,000円です。

初回に関しては無料としているところも多いため、まずは一度相談してみると良いでしょう。

・相続放棄申述書代理費用

戸籍謄本の取得にかかる実費も含めて3,000円~6,000円程度が相場と考えられます。

書類の提出代行も行ってくれるところがあり、相続放棄の手間のかかる作業を削減することが可能です。

・代理手数料

明確な基準はありませんが、3万~5万円程度が相場といえます。

これらが代表的なサービス内容ですが、他にも債権者への相続放棄の手続きの通知と完了通知や親族への相続放棄の通知などに対応してくれる司法書士事務所もあります。

熟慮期間を過ぎてしまっている場合は、上申書の記載が必要であるので通常より

2~3万円程度高くなることが多いため、相続放棄の手続きは早めに依頼しましょう。

弁護士の場合

弁護士の場合は司法書士より相場は高くなります。

代理手数料を含めて10万円前後が相場でしょう。

しかし、弁護士の方だと費用が高くなることには理由があります。

まず、弁護士は書類の署名押印までできます。

司法書士の場合は書類を作成してもらってから、自分で署名押印して提出します。

少しでも時間をかけたくない人は弁護士に依頼した方が良いでしょう。

弁護士は代理人になれます。

一方、司法書士は代理人になることはできず、あくまでも代行にとどまります。

弁護士に依頼して代理人になってもらっていれば、債権者からの催促などの対応も依頼することが可能です。

家庭裁判所から出頭の要請があった場合も、弁護士に代理で出頭してもらえます。

これらの弁護士のメリットをまとめると、被相続人に借金などのマイナスの財産が多く、執拗な取り立てや訴訟を起こされる可能性が高い場合は弁護士に依頼すると良いでしょう。

弁護士は債権者が相続放棄の無効を主張してきても対応できます。

相続放棄を専門家に依頼するメリット・デメリット

相続放棄のおおよその費用が分かったと思います。

思っていたより費用がかからない、という印象を持たれた人も多いのではないでしょうか。

専門家に依頼するメリットとデメリットを理解し、依頼するか考えてみてください。

メリット

相続放棄において最も重要なことは、相続放棄を成立させることです。

インターネットなどで調べて自分で手続きしてみたけど、結局うまくいかなかった。

これでは意味がありませんし、結果的に多額の負債を背負うことになります。

専門家に頼む最大のメリットは手続きを期限内に確実に終えられることです。

特に、3ヵ月というタイムリミット内で手続きを終えることを考えると、あまり悩んでいる時間もありません。

特に弁護士であれば相続放棄をするべきかどうかについても相談する事ができます。

相続放棄とは、すべての財産の相続をしないということになります。

本当に相続放棄がベストな対応かどうかは、専門家に相談することが最善でしょう。

親族との関係性が良くないため、相続に関して揉めたくないという人も専門家に依頼すると良いでしょう。

親族への相続放棄の通知を依頼することもできます。

デメリット

唯一のデメリットは費用がかかるということです。

もっとも、支払いについては後払いや分割払いに対応している事務所はたくさんあります。

安心して相談すると良いでしょう。

当然、自分で相続放棄の手続きをすべて行えば費用を抑えられます。

ある程度の法律の知識を保有している人や、過去に相続放棄の経験がある人は自分で行っても問題はありません。

注意してほしいことは、相続放棄は一度家庭裁判所に受理されると取り消しが困難であるということです。

つまり、自分の判断が間違っていたとしても、相当の理由がなければ取り消すことはできず、結果的に不利益が発生してしまう可能性があります。

また、次順位の相続人のことも考えておかないと、親族内でトラブルが発生する可能性があります。

相続放棄によって自分が相続人となってしまう可能性がある人と相続放棄をする旨を相談しておきましょう。

法定単純承認とみなされる行動を取ってしまうと相続放棄できなくなることもあります。

このように様々なことを考慮して手続きをすることが求められることから、専門家に依頼した際にかかる費用と得られるメリットを比較してどちらを選ぶかよく考えましょう。

相続放棄を専門家に依頼した方が良いケース

専門家に依頼するメリット、デメリットが理解できたと思います。

自分ですることも可能な手続きであるだけに、費用対効果を気にしてしまいます。

ここでは、特に専門家に依頼するメリットが大きいケースを2つご紹介します、

相続人の間に何らかのトラブルがある

親族とはいえ、長年会っていなかったり疎遠になっている相続人がいることもあります。

遺産相続で親族の仲違いが生じてしまうことは被相続人も望んでいないでしょう。

どうしても関わりたくない相続人がいる場合は弁護士に依頼しましょう。

弁護士は代理人になってくれるので、自分の代わりに相続人と連絡をとってくれます。

相談の結果、相続放棄に至らなければ遺産分割協議をします。

相続人全員の合意の元、相続を進めなければいけません。

相続人と顔を合わせることも避けたい、という人はやはり代理人を立てる必要があります。

相続財産にマイナスの財産、つまり借金がある場合も同様に注意が必要です。

もし、闇金などから借金していた場合は執拗に取り立てが行われる可能性もあります。

相続放棄が成立したあとも催促が続くこともあります。

弁護士であれば、これらに対応できるため、借金がある場合は予め弁護士に依頼することを検討すると良いでしょう。

相続放棄の手続きなどが面倒な場合

上記のように、弁護士でないとできない相続の代理が必要ないケースであれば司法書士に依頼することを検討します。

司法書士の方だと費用が安くて済むケースが多いからです。

もちろん、弁護士に依頼しても問題はありません。

司法書士に依頼することで相続放棄の煩雑な手続きを任せられます。

戸籍謄本の調査や財産目録の作成などは個人でするには難易度が高いものです。

同時に、時間と手間がかかるため、仕事で忙しい人や平日に動けない人は司法書士に依頼することを検討しましょう。

自分で相続放棄をするときに注意すべきこと

ここまでで専門家に相談するメリット・デメリットが理解できたと思います。

費用はかかりますが様々なメリットがあることが分かります。

専門家に相談するメリット・デメリットをふまえた上で、自分で相続放棄の手続きをする場合に気を付けたいことを以下に記載します。

遺産分割協議では不十分、必ず家庭裁判所でする

相続放棄の手続きをせずに自分は相続しないと決めるケースです。

遺産分割協議において、自分に財産はいらないから相続しないことにすれば、相続放棄と同義になると思っていませんか?

プラスの財産に関してはこれで良いかもしれませんが、マイナスの財産に関しては場合によっては法定相続分の割合に従って相続することになります。

法定相続分とは相続人の間で遺産分割の合意ができなかった時の遺産の取り分のことであり、借金の相続にもあてはまります。

法定相続分は以下の通りです。

配偶者と子どもが相続人配偶者1/2  子ども1/2
配偶者と直系尊属が相続人配偶者2/3 直系尊属1/3
配偶者と兄弟姉妹が相続人配偶者3/4 兄弟姉妹1/4

※子ども、直系尊属、兄弟姉妹が2人以上いる場合は頭数で按分する

遺産を相続していなくても借金は相続してしまうことがあります。

借金を相続しないためには家庭裁判所で相続放棄の手続きが必須になります。

一度相続放棄が受理されると取り消しは困難

一度受理された相続放棄を取り消しするためには、家庭裁判所が納得する理由が必要です。

そう簡単に取り消しできてしまうと、利害関係者に不利益を与えてしまう可能性があるからです。

よって、本当に相続放棄が最善の方法なのかをよく吟味してから申請する必要があります。

早い段階で相続放棄の手続きを済ませてしまい、後に遺産が見つかった場合でも、すでに相続放棄が受理されていれば、遺産の相続ができなくなります。

以下のような事例では相続放棄が取り消される可能性がありますが、取り消しの手続きのために専門家に依頼する必要が出てきてしまいます。

・詐欺または強迫による場合

・未成年者が法定代理人の同意を得ないで相続放棄した場合

・成年被後見人本人が相続放棄した場合

・後見監督人がいるにもかかわらず、被後見人もしくは後見人が後見監督人の同意を得ないで相続放棄した場合

・被保佐人が保佐人の同意を得ないで相続放棄した場合

これらのケースであっても確実に相続放棄の取り消しができるとは限りません。

申述書を提出する前に、本当に相続放棄で良いのか専門家に相談することが望ましいといえます。

必ず期限内に相続放棄する

相続放棄は相続の開始を知った日から3ヵ月という期限があります。

この期限を過ぎてしまうと伸長の申請ができないため、必ず期間内に専門家に相談しましょう。

そうならないためにも、必ず期限内に手続きしましょう。

相続の開始を知った日とは、基本的には被相続人の死亡を知った日になります。

法律のことを知らず、自分が相続人であることに気付かなかったという理由は通用しません。

被相続人と離れて暮らしており、知らせを知るまでに時間を要した場合は、知らせを知った日が3ヵ月の開始日となります。

また、先順位者が全員相続放棄をすれば、次の順位の人が相続人となります。

この場合は、先順位者が相続放棄したことを知った日が相続の開始を知った日と解釈されます。

まとめ

相続放棄にかかる費用についてまとめました。

司法書士で5万円、弁護士で10万円程度が相場となります。

専門家に依頼することで面倒な手続きを期限内に行ってくれるため、費用対効果は高いといえます。

特に借金関係のトラブルがある場合は、最初から弁護士に依頼しておくことがお勧めといえます。

自分で手続きをする場合は特にですが、期限を必ず厳守するように気を付けて下さい。

メリット・デメリットをよく理解してどのように相続放棄の手続きをするか考えてみてください。

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